認知症を遅らせる方法を言及した論文等

対策法 説明内容
薬やサプリ
薬4種類
日本国内で認可されている薬は4種類ですが、根本治療でなく10ヶ月発症を遅らせるものです。
食事
食事
カレー、オリーブオイル、ワインが良いとされる論文がありますがエビデンスは強くはないです。
脳トレ
脳トレ
頭を使う脳トレは認知症予防になると思われがちですが、2019年のWHO(世界保健機関)で根拠が薄いと判定されました
コグニサイズ運動
コグニサイズ運動
コグニサイズとは、日本の国立長寿医療研究センターが認知症プログラムとしてエビデンスがあると提唱した運動方法です。
リコード法
リコード法
アメリカの医師で研究者が開発した運動や食事のプログラムで、日本のクリニックでも受けれます。
アルミは危険
アルミは危険
アルミが鼻や口から摂取することで脳に巡り認知症を引き起こす原因になっているという論文も数多くあります。

5つの権威ある機関の認知症予防に関する論文

このページでは下記の5ヵ所の最新の見解について説明しております。

機関 発表年月
WHO(世界保健機関)ガイドライン 2019/5
国立長寿医療研究センター 2019/3
アルツハイマー病協会国際会議 2017/7
日本老年医学会 2019/4
久山町研究(九州大学) 2019/9

WHO(世界保健機関)が2019年に認知症ガイドラインを発行

参考:WHOの認知症ガイドライン(2019年5月)

PDFでダウンロードできますが、原文は英語になります。 内容は世界中の様々な臨床試験と論文を照らし合わせて12の項目において、「エビデンス」と「推奨度」を解説してます。 簡単に各項目をまとめると下記のようになります。

対処 エビデンス 推奨度
運動 信用「中」 推奨「強」
タバコ 信用「低」 推奨「強」
血糖値管理 信用「低」 推奨「弱」
栄養のバランス 信用「低~高」 推奨「強」
地中海料理 信用「中」 推奨「弱」
ビタミンE,B
不飽和脂肪酸
信用「低」 推奨「弱」
アルコール 信用「中」 推奨「弱」
脳トレ 信用「低」 推奨「弱」
コミュニケーション 信用「低」 推奨「弱」
体重 信用「低」 推奨「弱」
高血圧 信用「低」 推奨「弱」
脂質異常 信用「低」 推奨「弱」
抗うつ薬 信用「低」 推奨「弱」
補聴器 信用「低」 推奨「弱」

【運動】について

上記リンクのWHOのガイドラインの中で、「SUMMARY OF RECOMMENDATIONS」というページに詳細が解説されております。 運動についてのWHOの結論の翻訳は下記2つになります。


身体活動は、認知機能低下のリスクを減らすために、認知機能が正常な成人に推奨される

身体活動は、認知機能低下のリスクを減らすために、軽度認知機能障害のある成人に推奨できない

つまりは、既に認知症になった人には運動は推奨しないし、効果があった臨床試験のエビデンスも低いという判断です。 運動が認知症の予防にはなりますが、既に発症した人を治すことは難しいということです。 エビデンスが「中程度」となったのは、全項目においても「最高で中」なので、2020年現在で信用できる中では一番ということです。 具体的には週に150分以上の有酸素運動が推奨で、少し強めに負担を掛ける気持ちです。


【タバコ】について

他の健康上の利点に加えて、認知機能低下や認知症のリスクを軽減する可能性があるため、タバコを使用する成人には禁煙の介入を提供する必要があります

タバコについては、医学的関連としてのエビデンスは全く存在しないという意外な報告でした。 それでも全体の調査として、タバコを吸ってない人の方が認知症が少ない傾向にあるということで、予防として推奨するというWHOの報告になります。


【血糖値】について

糖尿病の管理は、認知機能低下や認知症のリスクを減らすことにはならない

血糖値の管理については、他の病気の健康上の理由でWHOガイドラインが示す様に治療は必要になります。 しかし重症な例を除き、血糖値を下げることが認知症の進行を食い止めたり予防にはならないとの判断です。


【食事】について

認知症の予防とは関係なく、バランスの良い食事をとることは健康に良いとして推奨されます

認知症のリスクを減らすために、地中海風の食事が推奨されることはない

ビタミンBおよびE、多価不飽和脂肪酸、および複合体のサプリメントは推奨できません

食事や栄養について、WHOのガイドラインでは、認知症の予防や改善になるというエビデンスはないという判断です。 栄養は関係ないと断定しているのではなく、認知症の発症と関係しているかどうかも分かってないということになります。 食事栄養と同様に、2020年現在では「医薬品」ですら根本治療できるものが開発されてない状況なので、何が良いのかが判断しかねるとの見方です。 ただ、近年営利目的で地中海料理やビタミン、オメガ脂肪酸、DHA・EPAと騒がれていますが、効果を保証するものではないというWHOの見解です。


【アルコール】について

アルコール自体が認知症の発症リスクを抑えたり進行を遅らせることにはならない

条件付の補足としては、過度の飲酒により健康を損なっている場合は控えた方が良いということです。


【脳トレ】について

認知訓練が認知症発症者や正常者に良い効果があるということはない

認知訓練のないようは、脳トレのエクササイズ、楽器の学習、ラインの記憶、学校での子供の助けなどです。 今回の項目の中で科学的エビデンスとして「一番信頼できない」のが脳トレという意外な報告です。


【コミュニケーション】について

社会活動と認知症のリスクの低下については証拠が不十分

社会活動やネットワークをした人と、そうではなく引きこもりがちだった人を双子研究などから統計にしたが証拠が不十分でした。 コミュニケーションについては、効果がないという断定ではなく「可or不可が判定できない」といったところです。


【体重】について

中年以降の肥満に対して体重をコントロールすることが認知症の予防にはならない

減量と認知症についての臨床試験は数多く世界中で多数ありますが、関係性が明確なものはないというWHOの判定でした。 肥満は一般論として、高血圧や糖尿病の因子になるので痩せることは悪いことではないということです。


【高血圧】について

高血圧の改善が認知症リスクの低下と関係することはない

「降圧療法は認知機能の低下や認知症の発生率に影響を与えないことが示されました」とWHOのエビデンスでは断定されてます。 正常な人、軽度の人も同様で「関係がない」と自信を持って示されております。


【抗うつ薬】について

現在、認知症のリスクを低減するために抗うつ薬の使用を推奨する十分な証拠はありません

【まとめ】

WHOが2019年に発表した認知症ガイドラインで、医学的エビデンスと推奨度が比較的高かったのは下記2項目です。

・有酸素運動 150分/週

・栄養のバランス

どれが良いというよりは、認知症予防に効果が無いものを明確にしておくことに重きを置いたように思えました。 現在でも根本治療の方法は分かってはなく、故意に騙すような情報に惑わされないのを防ぐ為なのでしょう。

国立長寿医療研究センターのNILS-LSA研究

参考:国立長寿医療研究センター NILS-LSAの研究成果より

国立長寿医療研究センターとは、厚生労働省が管轄の長寿を研究する機関として2004年に愛知県に設立された現在は独立行政法人になります。 国立がんセンターと同じ管轄になります。 東北大学と合同で研究をしているNILS-LSAで、認知症を予防する因子と悪化する因子について項目が記載されております。
2109年3月


認知症の予防になるもの(予防因子)

  • 運動の継続
  • 歩くこと
  • 青魚 DHA(ドコサヘキサエン酸)
  • 牛乳 短鎖脂肪酸
  • 豆 大豆イソフラボン
  • バランスの良い食事
  • 好奇心
  • 真面目さや責任感
  • 定年退職後の就労
  • 高い教育歴

認知症のリスクになる(危険因子)

  • 穀類
  • 抑うつ状態
  • 難聴
  • 聴力の低下
  • 耳垢で耳がつまる

青魚のDHA

NILS-LSAで独自に行われた60歳以上の方に「DHA」を「10年間」摂取して頂いた臨床結果が下記になります。

青魚のDHAを10年間摂取して、血液中の濃度が「138~175μg/ml」の人は、認知症になるリスクが約11%軽減される。 同様に血液中の濃度が「175~354μg/ml」の人は、認知症になるリスクが17%軽減されるという結果です。 普通の人の「59~138μg/ml」を100%として基準に計算されたようです。
2014年に研究発表


牛乳は予防因子、穀類は危険因子

272人の60歳以上の女性で2年間の臨床試験を行った結果が下記になります。

牛乳に含まれる、カルシウムやビタミンA、B2、B12、良質タンパク質が20%の認知症予防になったとの結果です。 1日の牛乳の摂取量は130gです。

また同時の臨床試験で、穀類を毎日430g摂取すると認知症の発症リスクが43%増えてしまったという結果で、出来るだけ副菜(おかず)を多く食べるようにとのことです。
実験期間:2010~2012年


栄養のバランス(品目の多さ)は予防因子

上記と同じで60歳以上の女性で2年間の臨床試験を行った結果が下記になります。

品目を多く摂取したグループは、品目が少なかったグループと比較して認知症リスクが44%低下したとの発表です。 栄養素の種類が多いことが脳に良い活動になるのではと推論されています。 この栄養のバランスという項目は、WHOのガイドラインでも推奨されてますので、明確な理由は分からないですが結果として良いようです。


誠実性があると悪化しにくい

60歳以上の10年間のデータで、外向性、協調性、誠実性、神経質など、本人の性格から実験した結果になります。

グラフの説明として、認知症になった時に悪化しないのが「誠実性を持った人」だという内容です。 真面目さや責任感の強さが、それ以上悪化させない要因になるということです。


難聴に関してはデータを見ると、「知識力・処理能力」が低下するとあったので、認知症のリスクとは違うように思いました。


【まとめ】

WHO2019年ガイドラインより数か月前の発表で、異なる部分も多々ありますが、重なった部分としては「運動」と「栄養のバランス」です。 臨床試験の数もそれほど多くはなく信頼性としては、WHOガイドラインの方が高いと思います。

アルツハイマー病協会国際会議

参考:2017年アルツハイマー病協会国際会議で発表された内容

2017年7月に海外ロンドンで発表された内容で、認知症予防のリスク35%は上記の項目で回避できるとした論文です。

原因 リスク 年代
低い教育 8% 15歳以下
難聴 9% 中年期
高血圧 2% 中年期
肥満 1% 中年期
喫煙 5% 老年期
うつ病 4% 老年期
運動不足 3% 老年期
社会的孤立 2% 老年期
糖尿病 1% 老年期
合計 35%

発表されたのは、アルツハイマー病協会の最高科学責任者(CSO)であるマリア・カリージョ博士で、世界の認知症の1/3はライフスタイル改善で予防することができるということです。 それ以外にも下記の内容を発表されました。

《睡眠時無呼吸症》
睡眠時無呼吸症は、脳内のアミロイドβを増加させる原因になります。 アミロイドβは、認知症を引き起こす脳内の沈殿物です。

《ストレス》
アメリカのウィスコンシン州における、人種差別を受けているアフリカ系米国人は同じ地域の白人と比較して1.8倍高い認知症の発症率がストレスによるものだと述べています。 若年期の1つの大きなストレスが、認知症発症を早める「4年分」に相当すると言っています。

アルツハイマー病協会国際会議の内容については、懐疑的な見方の人も多くいます。 最初に記述しました、WHO2019年の発表は、この35%の予防が間違って伝達されないよう釘をさした形にもなっております。


反対意見:山口晴保氏(認知症介護研究・研修東京センター・センター長)

参考:認知症「先送り」の考え方【時流◆“予防”の誤解を解く】

この中で山口氏は、WHO2019でこれら35%の要因はエビデンスが低いと示されました。 また、認知症35%が予防できるとした臨床試験の多くは長くて10年くらいの追跡期間で短いので、期間限定的な効果の可能性が高いと仰ってます。 日本とアメリカ人(白人)では発症率も2倍違いますので、一概にライフスタイルで軽減できるかどうかは言えないとしてます。


【まとめ】

多くの文献を調べていて、認知症の35%要因は予防できるというのが間違っているという人が多いです。 発表内容には、「地中海料理」「DASH食」が良いという懸念する表現もありました。 2017年7月に発表され、2019年3月にWHOが反対の内容でエビデンスが低いと釘を刺しています。 各業界が自己の営利目的で、この発表内容を利用するのはと思ってしまいました。

日本老年医学会

参考:認知症患者への薬物治療が生命予後に及ぼす影響

認知症を改善する医薬品は世界でもまだ開発はされてません。 発症を1年弱遅らせるものは日本でも4種類認可されています。

日本老年医学会では、2012年1月~2016年12月に入院された患者さんで入院時に飲んでた薬が「4剤以下」と「5剤以上」のグループで分けた時に、多剤使用の方の寿命が短かったという内容です。 結論として、予防ではないですが人生終末期における多剤使用は寿命を短くしてしまうということです。

久山町研究(九州大学

参考:老年期認知症 | 久山町研究

久山町研究とは、九州大学が福岡県糟屋郡久山町の住民8400人の40歳以上を対象に長年に渡り認知症や心疾患などを研究して発表しているところです。 厚生労働省が発表する際にも使用されるエビデンスの高いデータになります。

私が国会図書館で調べものをしていて、日本認知症学会誌という定期発行の雑誌に「久山町研究」について書かれていて知りました。 その雑誌では、久山町研究で認知症を発症して人のライフスタイル(運動、睡眠、食事、家族構成)など10種類以上を統計にして棒グラフでまとめたものがありました。 その中で、個人的に大きく影響しているように見えたのが「睡眠時間が5時間未満」の項目でした。 具体的な数値は覚えてないですが、2倍以上だったと思います。 また、様々なライフスタイルにおいて一番突出した発症率の数値でした。

【まとめ】

睡眠時間が短いと認知症になりやすいという研究もエビデンスも他にはないですが、久山町研究の臨床データでは突出していたと思います。 現在まだ認知症を治す薬がないなかで、予防で何が良いかを探すのには統計データから「何が悪いか」を見つけて要因を排除していくのがベストと思われます。

脳トレは認知症予防にならない

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